#35 まだ足りない(投稿作品/竹田佳夜さま)




注)この作品は「37.もっと欲しい」から続いております。
未読の方は、先にそちらをお読みください。


「…済んだから出してくれ」
 消え入りそうなほどに小さな声で帰ってきたトグサがそう言った。
   俯いたトグサの表情を伺う事は出来ないが、髪からちらりと覗く耳が赤く染まっているのが分かる。
 エンジンを掛けかけたアズマの鼻に、別の臭いが引っかかった。
 エンジンをカラ回しして、アズマは動作を止める。
 どうしたのかと顔を上げたトグサの視界を自分の身体で塞いだ。
「な、何だよっ!?」
「それは俺の台詞」
 シートに挟みこむようにトグサを捕らえると、アズマはトグサのスラックスの前を荒っぽくくつろげた。
「バ、バカっ! 何しやがるっ!」
「うーん、何ってナニ?」
「冗談は顔だけにしろっ…っ!」
 抗うトグサの手を左手一本で纏めあげると、アズマはスラックスを一気に引きおろした。
 そこは下着の上からもはっきりと盛り上がっているのが分かる。
「こんなヤラシイ臭いプンプンさせて、澄ました顔して現場に行こうって正気かよ?」
 薄く笑ったアズマの言葉に、トグサの顔が更に赤く染まる。
「自分で掻き出して感じちゃったんだ?」
「バカな事言ってないで離せっ!」
「バカな事言ってんのはあんたの方だろ?」
 アズマの無骨な指が下着の合わせから難なくトグサの雄を引っ張り出した。アズマの鼻に濃厚なトグサの臭いが充満する。嗅覚を強化しているアズマだからかぎとれる極限。それをアズマはうっとりと深く吸い込む。
「こんなんで一体何の捜査が出来るって言うんだよ?」
 にやりと意地悪く笑うと、アズマはゆっくりと立ち上がったまま震えるトグサの雄をしごき始めた。
「し、少佐、が…っ」
 アズマの手のリズムに合わせてトグサの息が上がる。体をひねり、込み上がってくる快感から逃れようとする姿はこれ以上ない痴態で、アズマを誘っている。
 擦り上げる音はすぐにぬかるみを帯び、鼓膜までも犯していった。
「やめっ…アズ…っ…!」
 体とは裏腹の言葉だけの拒絶。しかし彼の体はしっかりアズマの愛撫を受け入れている。止めてやる理由などない。

 やがてトグサの喉に引っかかった小さな悲鳴と共に、アズマの手の中のものは放射線を描いて白濁を吐き出した。達った反動か、戒めたトグサの体が弛緩していくのが感じ取れた。今やアズマの鼻でなくても、独特の臭いが車内に充満しているのが分かる。他の誰でもないトグサの臭い。
 アズマはごくりと息を飲んだ。
 いささか強引なやり方で達かされたトグサは最早抵抗する気力もないらしく、荒い息で胸を上下させている。
 勿論アズマはそれだけで終わらせるつもりはない。トグサの白濁でぬめったアズマの手は、今度はトグサの下着を膝まで引き下げた。
「な・・何をっ・・」
 事は終わったのだと思っていたらしいトグサが、目の前にアズマが突きつけたものを見て顔色を変えた。
「びっくりしてくれてるの? 嬉しいなあ」
 トグサの『男』であるバトーほどではないものの、アズマもそれなりに自分のモノには自信がある。既に雄々しく立ち上がったそれをトグサに見せ付けるようにゆっくりとしごいて見せると、アズマの行動の目的を察したか、怯えたトグサが顔を引きつらせて更に暴れる。
「馬鹿っ! 早く行かないと少佐が・・っ!」
「そうそう。早くイかないと少佐が怖いから、あんたも協力してくれって」
 アズマの手がシート脇に落ちたかと思うと、急に背の支えが消え、トグサは後ろに倒れ込んだ。その勢いで腰が浮く。アズマがリクライニングを倒したのだと気づいた時には、浮いた腰とシートの間にアズマの膝が滑り込んでいた。
「ご開帳〜♪」
「馬鹿、何しやがる…っ!」
 足首を掴んで大きく開いてやるとじたばたとトグサが暴れたが、狭い車内で膝がシートにつくほどに足を持ち上げられてはどうすることも出来ない。
「今更恥ずかしがることもねえだろ? 俺とあんたの仲じゃねえか」
「なっ…んんっ!」
 ひくつくトグサの後孔に指を辿らせ、先ほどトグサの吐き出したものを潤滑油代わりに塗り込めて沈める。
 だがその必要もごく浅い部分だけだったようだ。トグサも焦って急いだのか、奥はまだしっかりと独特のぬめりを残していた。嗅覚では分かってはいたが、実際にその存在を確認するのとではやはり別だ。アズマの声音が落ちる。
「…まだバトーのが残ってるぜ」
 ぬぷり。
 アズマの指の動きに孔が音を零す。トグサに聞こえるようにわざと中を掻き回してやると、背けた頬が羞恥にかはっきりと赤く染まった。
「アズマっ・・ 止めろっ・・」
「自分だけ気持ちよくなって、俺はお預けってのは酷くね?」
 猛々しく持ち上がったアズマの雄をトグサの濡れた入口にぴたりと当てると、ひっとトグサの喉が空気を押し出した。
 次の瞬間、アズマは腰を勢い良く前へと突き出した。トグサの体を裂くように押し込まれる肉の楔。凶悪な仕打ちをトグサの中は容易く受け入れ、アズマを熱く絡め取りきつく銜え込む。
「きっつ……処女とやってるみてえ」
「ばっ・・・!」
 アズマを罵る声は途中で止まった。  険しく眉間に皴を寄せ、きつく目を瞑って何かに堪えているかのようなトグサがきりりと歯を食いしばった。
 だが、それだけではない事をアズマは知っている。
 まるで何も知らない処女のようなきつい途をアズマは更に押し上げる。トグサの足を引き寄せて抱え、角度を変え、奥のその先を狙い突き上げたアズマの動きに、明らかにトグサの反応が変わった。
 恥じらって嫌がるのは意識だけで、トグサの身体は抱かれる悦びを知っている。お堅いとばかり思っていたトグサの変貌振りを初めて見たときは本当に驚いた。
 だが、同時にトグサを仕込んだ奴へのどす黒い嫉妬も感じたのだが。
「感じる?」
 声を漏らさないようにか首を懸命に横に振って意思表示をするが、二人の間で熱を持ち始めているトグサの雄がそれを雄弁に語っていた。
「トグサ・・ あんたん中熱くて気持ちいぃっ・・」
 深くえぐるように打ち付けながら囁けば、赤く染まった顔はふるふると横に振られる。
「なぁ・・」
 俺の名前を呼べよ?
 持ち上がったトグサの雄に指を絡めれば、トグサの喉が仰け反った。
「やっ・・・ アズぅ・・・」
 最早トグサの制止の言葉は意味がない。欲望のままに荒い息でトグサを追いたてるアズマの手の中で、性急にトグサの雄も再度力を持ち直す。
 アズマに串刺しにされ、更に前を弄ばれ、堪えきれない悦楽に痙攣にも似たトグサの体の動きのせいか、はたまたアズマが打ち付ける腰の動きのせいか、車体が揺れていた。
 やがて熱い迸りがトグサの中に勢いよく注がれるのと同時に、アズマの手の中でトグサが二度目の絶頂を迎える。
「あぁ・・・っ!!」
 悲鳴に似た喘ぎがトグサの口から零れる。その声だけでもう一度いけそうだ、アズマは涙の滲んだトグサの目尻を眺めながらそんな事を思った。


『アズマっ! トグサっ! 何をしているっ!』
 電通越しに草薙の怒声がダイレクトに電脳に響く。個別信号をトレースすればこの場所から二人の信号が動いてないのは分かるから、彼女からすれば『現場に急行しろ』と命じたたのに何をさぼっているのだと怒るのは当然の事だろう。
「しょ少佐・・っ! い、いえこれはっ・・」
「トグサが腹壊したんで、今トイレにいかせてますー 原因はバトーが知ってるんで、そっちに聞いてください」
トグサが草薙に弁解する前に、アズマが横から答える方が早かった。
「あ・・アズマっ!!」
 突然予想外の事を言いだしたアズマに、トグサが反論するが、彼らの言い合いを許す程草薙は寛容ではない。
『分かった。トグサの腹痛の原因はバトーに聞くとしよう。あと5分で来られないようなら、アズマはトグサを置いてとっとと来い!』
「という事だからトグサ、そろそろ便所から出てこいー」
「アズマ・・・・っ!!」
 もちろん一度目の原因はバトーだが、二度目、つまり現在の原因を作ったのはアズマだ。トグサが嫌がるのを無視してたっぷりと中出しした上に、トグサ自身が吐き出した精液の後始末に、結局トグサは再度トイレに逆戻りする事になったのだ。
 さっきより余程タチが悪いにも関わらず、しれっとその罪をすべてバトーになすりつけたアズマに対してトグサが相当怒っていることは、電通越しでもその度合いが知れた。
すぐにでも帰ってくるだろう方角を眺めながら、アズマはにやりと笑う。
 これぐらいの意趣返しは当然だろ? そう離れた場所にいるライバルに挑むように顔を上げる。開けた窓から入り込む夜気が火照った体に心地良い。窓を全開にした上に空調を利かせてるので数分前まで車内に籠もっていた濃厚な雄の臭いはかなり薄まっている。だが、アズマの鼻は未だに車内に染みこんだその臭いをかぎ取っていた。
 自分とトグサ、二人分の精液の混じり合った臭い。
 ぞくぞくする。昂ぶる気持ちを抑えられず、アズマは獣のようにぺろりと唇を舐めた。
 許されるならもっと食らいつきたい。快楽にのたうつ身体を組み敷いて隅の隅までしゃぶり尽くして、トグサを自分のものだけにしたい。トグサの身体を自分の匂いに染めてしまいたい。
 下手をすれば理性の箍が外れてしまいそうなその興奮を抑え込んで、アズマはトグサの帰還を待つのだった。



<書き手よりひとこと>

こちらではお初にお目にかかります、竹田佳夜と申します。
伊藤先輩から氷月先輩のお話を見せてもらって激しく萌えたとお伝えしたら、『じゃあ、書かない?』とお誘いを頂きまして、今回この素敵企画にお邪魔することになりました。
エロの大師匠の伊藤先輩の企画に私なんかがお邪魔していいのかなーと思いつつも、アズトグは大好きなのでとても楽しく書けました。楽しんで頂けたら嬉しいです。


<投稿御礼>

佳夜嬢、今回は御本の御礼という事で捧げたSSに、こんな勿体ないお返しを頂いてしまってすいません&ありがとうございました〜!!
エビで鯛を釣るとはまさにこの事っ!
逃げた私の後をしっかりフォローどころかデコレートしてくださって感無量です。
っていうか書いて良かった!!
逃げて良かった!!(ヲイ)
・・や、人には向き不向きというものがありますから・・(ごにょごにょ)

アズマの飄々とした感じとか、でもしっかり獣な所とか、あぁアズマだよなぁと納得しちゃってる末期な自分がいますが(笑)、美味しく頂かせて貰いましたv
口を開けば実際書くものより倍はとんでもない発言の飛び出す佳夜嬢、これからも萌話を是非提供して下さいマセv

よーこさんとの水面下企画楽しみに待ってますv(氷月)

*****

ナイスな原稿、ありがとでした! 『アズマはケダモノ』という私の主張に同意してくださって、嬉しかったですvv
 私と対等にエロ話が出来る稀有な存在である佳夜ちゃんをけしかけてよかったと、届いたファイル拝読して思いましたよ〜。
 また熱く濃く語らいましょうv 今回は本当にありがとうございました! …そしてまた原稿くれると嬉しいです(にやり)(伊藤)


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