唇を離した瞬間、透明な糸が二人の間を繋いだ。
俺がこんなことをしでかすとは思っていなかったらしいバトーは、濡れた口元を拭うことすら思いつかないように見える。
俺の襟元に掛かった手はネクタイの結び目を解きかけていて、それじゃまるで誘ってるみたいだぜ?
「何で…こんな事……」
呆けたままの身体を壁に押し付けて二度目のキスをしようとしたら、さすがに嫌がられた。だけど密着した腰はもう反応を見せていて、説得力ないのに。
「…俺、知ってるんだ」
バトーがどれだけ少佐のことを想っているかということも、疼く身体を時々イシカワに慰めてもらっていることも。
それを思い知らされる度にどうしてその対象が自分でないのかと哀しくて、そして腹が立った。
もう出会って随分になるのに、俺とバトーの立ち位置はずっと平行線で。だからと言ってこんなことをしていいとは思っていないが…本気で拒まないってことは、俺をそれなりには受け入れてくれてるって思っていいんだよな?
「イシカワでもいいんなら、俺でも構わないよな?」
少佐はいつだって完璧で、誰よりも強くて、綺麗な人だった。
あの人の代わりなんて誰にも出来ないと思うが、それでもバトーが望むなら何だってしてやるから。
…だから、ほんの少しでいいから俺を見て欲しい。
背けた横顔に口付けて、首筋へと唇を滑らせるとひくりと身体が震えた。
「十年早えよ…新米」
「試してみるかい、先輩?」
返って来た軽口を了解ととって、俺はバトーのインナーに手を掛けた。
<元締より一言>
珍しくもトグの一人称にチャレンジしてみました。
イノセンスの捜査中のひとコマ…て感じでしょうか?
犬の二人は、ものすごく切ない関係で辛いです。
バトさんの気持ちもわかるんですが、もうちょっとトグの事も考えてやってよ〜と
いつも見るたびに思いますねw
「Separation」は、某アニメのEDになってますAngelaの曲から。
これまたとっても切ないラブソングで、大好きな曲です♪