「確か一昨年は三晩連続飲み明かしだったよな」
「その前はヌードバーでこっちが余興で剥かれたよな…」
陰鬱な表情が揃ってひそひそ談合している九課のミーティングルーム。重い唸りを合唱し、彼らは黙り込んだ。
明日この世の終わりが来るとでもいう様な沈鬱な空気だ。そしてしばしの沈黙の後、誰かがぽつりと言い零した。
「やっぱり『それ』しかないか?」
「は、反対反対大反対っ!」
勢いよく挙手して異議を唱えたのはアズマだった。だが、
「じゃあお前が代わりになるか?」
というパズの問いにこれまた彼は激しく首を横に振って拒否する。
「他に何かいい案があるなら採用してやるから言ってみろ」
とはイシカワの言葉。アズマは懸命にない知恵を雑巾の様にきりきり絞るが案の欠片も出てこない。
「…そういう事だ」
ため息と共にイシカワがアズマの肩に手を置き、首を横に振る。
「俺達だってあいつが憎くてやる訳じゃない」
ただ彼への愛情と己の保身を天秤にかけた時、傾くのがこっちだっただけの話なのだ。
「それじゃ決まりだな」
「取りあえず用心の為バトーは…」
そして密談は続行されたのである。
…肝心の当事者達を完全に蚊帳の外に追いやって。
かくして魔の×デーはやってくる…
「トグサ、仕事上がったらちょっといいか?」
上がり際にイシカワに呼ばれ、トグサは立ち止まる。ロッカールームに誘われ、扉を開ければ場違いな芳香が鼻についた。
顔を上げれば大量の生花が華やかに灰色のロッカールームを彩っている。
一瞬何事かと思ったが、すぐにその答えにトグサは辿り着いた。
「少佐の誕生日プレゼントか…」
「あぁ」
そういえばそんな季節か…と一瞬感慨に耽ったものの、すぐにその恐ろしき日がもたらしてきた数々の惨事にトグサの体は震え上がった。
そんな恐怖の日を何故自分は今まで忘れていたのか、己の迂闊さを責めずにはいられない。
例え脳がその日を記憶することを拒否しているとしても、だ。
「お前も一口乗るか?」
何か贈り物をって何やりゃいいんだ!?と脳内パニックのトグサに、パズが提案を向けた。
「一応これを9課の面々一同とカードでもつけて贈るつもりでいるんだが」
「乗る!」
地獄で仏とはこの事か。トグサは一も二もなく提案に乗った。
「でも贈るって少佐のセーフハウスの住所知ってたのか?」
「いや、手っ取り早く本人に聞いた。サプライズなんて柄じゃねぇだろうしな」
「何でも女友達と夜通し飲み明かすらしいから、そこにこいつが届くって寸法な訳だ」
少佐とはいえ女、花を―しかもこんな大量な花を貰って良く思わないはずがない。
「これから俺達で梱包するのか?」
意気揚々と腕まくりし作業し始める気満々のトグサの後ろから、大きな腕が伸びトグサの体を絡めとった。
「アズマ、何すんだよ、邪魔だから離れろって」
「…トグサ… ごめん…」
叱り飛ばしたトグサに、珍しく覇気のないアズマの声が耳元で呟かれた。
「? ゴメンって…」
訝しむトグサの耳に不穏な言葉が飛び込んできた。
「よし、アズマ。そのまま抑えてろよ〜」
振り向けば迫り来る皆の姿。全く逆なイシカワとサイトーの表情を見れば間違いなく自分にとってこれがとんでもない事なのだろう事が察せられた。
トグサの動揺も全くお構いなく、次々に延びてくる手がトグサのジャケット、シャツ、ズボンに伸び、容赦なくそれを剥いでいく。
あっと言う間にトグサは一糸まとわぬ姿にされた。非情にも下着すらも脱がされ、身ぐるみ剥がれたといったといった状態。いつから9課は追い剥ぎ集団になったのか…などとは思わない。そんなかわいい話じゃない事をトグサは本能で直感していた。
「アズマ離せっ! っていうかこれは何なんだよ!?」
いくら同性同士とはいえ全裸を晒されるのには激しい羞恥を感じる。トグサには露出狂の気はないのだから。
だがそんなトグサの抗議など全く歯牙にもかけず、彼らは不穏な事にトグサに背を向けて何やらごそごそと漁っている。
やがてこっちに向き直った彼らの手に握られていた品々に、トグサは引きつった呻きを漏らした。
「取り敢えず暴れないように、と」
仕事柄…なのか実に手際よくイシカワがトグサの両手足首をガムテープて固定する。
「一体何なんだよーっ!」
最早それは抗議と言うより悲鳴に等しい。トグサの喚きににこやかにボーマが答えた。
「だから少佐へのプレゼントだって。トグサも一口乗るって言っただろ?」
「…プレゼント…」
妙に乾いた口がその恐るべき単語を紡ぐ。
揃って頷かれる頭が5つ。
…つまり。
「ってえぇぇぇぇ!? ププププププレゼントって、この花じゃないのか?!」
「今までを思い出せ。花くらいであの少佐が勘弁してくれるか?」
冷静に指摘されトグサは返答に詰まる。確かにそうなのだが、しかしじゃあそれが何でこうなるのか!?
トグサの糾弾は勿論無視された。
「だからトグサ… これがせめてもの俺達からの詫びの気持ちだ」
痛ましげに告げられる言葉。だか表情は全く裏切っているイシカワが、取り出した瓶を斜めに倒す。どろりと粘質の液体がイシカワの手に零れ落ちた。
そしてその手でイシカワはトグサの体に触れた。
「ひっ…!」
冷たい感触がふるえとなりトグサの背を駆け上る。
「相変わらず感じやすいなお前」
「「相変わらずって何だよ!?」」
当人と当人を押さえているアズマが揃って突っ込むが、イシカワは答えの代わりにその滑った手でトグサの尖りをきゅっと摘んだ。
「……っ!」
声こそはこらえたが、トグサの体が震えたのはイシカワにもトグサを抑えるアズマにも分かったはずだ。
そのままイシカワは親指の腹で押しつぶしたりつまみ上げたりしながら液体を塗り付けていく。
ただ胸を弄られているだけなのに、トグサは酷く体が火照って熱くなるのを感じ始めていた。その熱に呼吸が徐々に荒くなる。
「なんだ…よ…これ……」
空調の効いたはずのロッカールームが蒸し暑く感じる。いや、さっきまでは涼しかったはずだ。己の体の異変に嫌な汗が流れる。
そんなトグサの呟きなど気にせず、尖りを中心として胸板にまんべんなく塗り付けるイシカワに後ろから声がかかった。
「イシカワ、遊んでないで早くやらないとバトーが戻ってくるぞ」
「回線オープンにしてくれてるからまだあっちにいるって把握は出来てるけど、念の為急いだ方がいいよ」
イシカワとは別の作業をしていたボーマが忠言する。
「やれやれ、分かったよ。おいアズマ、俺が前やるからお前はトグサの後ろに塗って…」
そこまでいいかけたイシカワは呆れたような溜め息を落とした。
「…分かった。お前には無理だな。パズ、アズマと変わってやってくれ。アズマの若さがやばそうだ。ったくこれでもうそれか、お前は…」
布越しに固い物が背に当たるのをトグサは早打つ動悸の下感じた。そのものの正体を察したトグサが体を引き離そうと身じろぐが、アズマの腕の戒めはさらにきつくなりトグサの体は更にアズマの昂ぶる雄と密着した。トグサが察したのをいいことに、アズマの足がトグサの股を割り、自分の雄を押しつける。トグサの喉が引きつった呻きを漏らした。
「アズマ! 気持ちは分かるが手を出すなよ。使用済みなんて少佐に送ったら後から何されるか」
すかさずイシカワの叱責が飛ぶ。
「アズマ、抜いてくるか? それともここでトグサ視姦しながら抜くか」
更にはトグサとアズマを引き剥がしたパズがとんでもない事を言う。
あまりにダイレクトな言葉にアズマは目を剥いたが、何か言いかけた口を悔しそうに結ぶとロッカールームの奥シャワールームへと消えた。
「さて、と。じゃあそっちは頼む」
「あぁ」
イシカワから瓶を受け取ったパズの低い声が鼓膜を震わせトグサは小さく震えた。
再度液体をつけ直したイシカワの手がトグサの雄を柔らかく掴んだ。
「くあっ……!」
ダイレクトに触れられ、最早トグサには声を殺すことは出来なかった。
イシカワは愛撫するというよりは隅々まで丹念に塗り込めるような手の動きでトグサを煽りたてた。くびれの部分や裏筋までいっそ恨めしい程に丁寧に、液体がしたたり落ちる程に絡めていく。
こは自然の摂理。イシカワの手管に持ち上がっていたトグサの雄は更に傾度と硬度を増していった。雄は己を主張し熱く脈打つ。寒くもないのに震える体は何かを堪えている為か。まるでイシカワの触れた場所全てが熱で覆われていくかの様に自身にも理性を霞ませる熱が襲う。その熱にトグサの雄は歓喜の涙すら滲ませていた。
トグサの腰は経験と本能から解放を求め揺れ始める。だがすっかり凭れ上がったトグサの雄は不意に快楽とは別の痺れを訴えた。
視線を下ろせば、張り詰めたトグサの雄は、その根本を毒々しいほどに赤いレザーベルトのコックニッパーできつく戒められていた。
「悪いが、イって貰っちゃ困るんだ」
二ッパーの存在を確認するように、イシカワがその根本についた鈴を指で弾く。その音はトグサの悲鳴でもあった。
トグサの集まった熱は解放を禁じられ戒めの痛みをも飲み込みトグサを苦しめる。
「イ…イシカ…ワ…!」
嘆きと懇願とが混ざった喘ぎは唾液と一緒に唇から零れた。だがイシカワの悪戯に抗議するより先に新たなる試練がトグサにふりかかった。
トグサを片腕で抱えるように押さえ直したパズの右手がトグサの後ろを弄り始めたかと思うと、遠慮なく指が秘所に沈んだ。イシカワの手同様にぬるみを帯びた指は手慣れたようにまずは浅く抜き差しされる。
「い…いや…だ… パ…ズ…っ!」
指がぐるりとトグサの中で蠢き、刺激すればトグサは腰だけでは足りず全身をふるわせた。
「イシカワ、少し押さえておけ」
片腕で支えていたトグサの体をパズが前に倒す。うつ伏せにされたトグサの両肩をイシカワが押さえて固定した。
「やっ…やめっ…!」
抗いの声は力なく、むしろ媚びている様にも聞こえる。
パズは持っていた瓶の口をトグサの後孔に添えると全て使い切る勢いで中身を押し出した。突然中を逆流する冷たい液体にトグサが声にならない悲鳴をあげる。
「おいおい、それ10回分くらいはある催淫剤入ローションなんだがな」
無茶をするパズにイシカワが苦笑する。
「全部使いやがって。こりゃトグサ辛いぞ」
「少佐達が相手なら平気だろ」
けろりと答え、パズは飲みきれないローションを溢れさせているトグサのひくつく後孔に更に指を差し込むと、指を増やし奥へと促す。
ぐちゃりぐちゃりといやらしい音が指の動きに合わせてトグサの後ろ口がら零れる。まるですっかり熟した女の秘所のようだ。
冷たいハズのローションがまるで熱い熱の塊のようにトグサを後ろから犯していく。パズの指で前立腺を刺激される度にトグサは己を制御できず腰を浮かせ鼻にかかった喘ぎを紡ぐ。
いや、既に前立腺を弄るまでもなく、後ろの口にパズの指が触れるだけで、もうトグサの腰はねだるように蠢くようにさえなっていた。
だがどんな快楽を与えられようと達することを戒められたトグサには射精という出口はない。体内に蓄積される快楽にトグサは狂いそうだった。
最早羞恥の識別さえもつかないのか、イシカワ達が目の前にいるというのに手を伸ばし自分でイこうとするトグサの腕を、イシカワがトグサ自身につけたものとお揃いの赤いレザーベルトの拘束具で縛り上げる。
「いや…だ… イシカワぁ… パズぅ…」
自分が壊れてしまいそうな悦楽からの救いを求め、彼らの名を呼ぶトグサの声の艶といったら娼婦など足元にも及ばない。
上気した全身は桃色に染まり、涙を滲ませながらとろんとした瞳に薄く開かれ震える唇。予想以上の出来にイシカワもパズも感嘆の吐息を零した程だ。
「まさかここまでとはな」
「あぁ。少佐が相手じゃなきゃこのまま頂くところだ」
両腕に続き、今度は両足を膝を曲げた形で同じく拘束具を装着させる。仰向けにされれば、足を閉じられない為可哀想な状態の雄と、その下のお口が丸見えになるといった状態だ。だらしなくとろりとローションを零す口は、ぬらりと光り淫靡な事このうえない。
少しでも楽になりたいと体を揺らすたびに、トグサの雄を戒めるベルトについた鈴がちりんちりんとまるでトグサの喘ぎのように鳴った。
「たっぷり可愛がってもらえ」
残酷に囁き、イシカワはその状態のトグサを担ぐと、ボーマとサイトーが準備していた「包装箱」にトグサを下ろす。
「うわートグサ可愛い」
なんとも楽観的なボーマとは反対に、サイトーはトグサの姿に痛ましく顔を歪めた。
先ほどの生花が所狭しと飾られたケースの真ん中にトグサを収めると、イシカワは最後の仕上げと、トグサの口にボールギャグを咬ませる。
「花の匂いで気分悪くならないように、花芯に催淫効果のある香料を仕込んどいたから安心してな」
まさか規定量を遥かに越えた量の媚薬を摂取させられてるとは知らないボーマが、涙目のトグサの頭を撫でる。ボーマにしてみれば善意の行動だが最悪だった。
イシカワとパズは顔を見合わせる。後ろから入れたローションは少佐の元に届けられるまでに大体はトグサの中に吸収されるだろう。それはかなりきつい事だろうというのに、更に催淫香漬けにされるとは、一体どうなってしまうのか。
「…まぁ少佐だしな」
最悪トグサが満足しきれない場合は自分が責任とってトグサが満足するまで可愛がってやろうかとも思ったが、相手はあの少佐だ。下手すればこの状態でようやくタイだったりしないか…?
そんな恐ろしい事をイシカワとパズは揃って考えたりしていた。
「頑張れよ」
トグサは懸命に何かを訴えているが、噛ませた口枷のせいでそれは聞こえない。
「あ、これ忘れ物」
蓋を閉めようとして慌ててボーマはそれをトグサの周りを飾る花の中に添えた。
【HAPPY BIRTHDAY】
一体このプレゼントを見た時彼女はどんな顔をするのだろう。
…そしてトグサはどうなるのだろう。
彼を待ち受ける未来に瞑目して皆の見守る中ケースは閉じられたのだった。
彼らがその顛末を知るのは三日三晩後の事になるーー
はっぴーばーすでー、よーこさん♪
という事で、お誕生日SSなぞをプレゼントさせて頂きました。
しかも合作!
い、いえ、自分にエロが書けないから、エロだけ投げて佳夜嬢に押しつけたなんて事はございませんよ??
まぁ、蓋をあけたら、なんだかとんでもないプレゼントになってしまいましたが、お納め下さいマセ。
細かな設定には突っ込まない方向でひとつ(笑)
(氷月さま)
この度はお誕生日おめでとうございます、よーこ先輩v
拙いものですが、プレゼントでございます。
ってエロスなプレゼントになってしまいましたが、エロの先輩のよーこ先輩にというのが、なんだか運命的なものを感じますネ☆
これからも先輩の萌を楽しみにしていますので、じゃんじゃん書いてください!
(竹田さま)
ものすごいエロいプレゼントをありがとう!! 二人とも愛してる!!!(嬉しさのあまり錯乱中・苦笑)
イシカワさんとパズが鬼畜で素敵です〜vv
しかし、「『三日三晩後』ってことは、その間ずっと苛められてたってこと? 気になるっ!!」とお二方に聞いてみたら、
「じゃあ、先輩ぜひ書いてくださいねv」と佳夜ちゃんににっこりと返されてしまいました。
…私、墓穴掘ったでしょうか?w