「だんな・・?」
急に暗くなって戸惑うのか、不安そうな声がバトーを呼ぶ。
「怖くなったか?」
「ちが・・っ」
トグサは否定しようとするが、顔が赤いところを見ると図星なのだろう。
「大丈夫、任せとけ」
「ん・・」
優しく抱き締めてもう一度額に口づけると、安心したのか腕の中の体から力が抜けた。
(おやまあ・・)
どうやらトグサはスキンシップに弱いらしい。リラックスさせようと髪を撫でる手にうっとりと目を細める様子を見て、バトーは小さく笑った。
「何だよ」
笑われて拗ねたのか、トグサがムッとした顔で睨む。
「別に」
額から瞼、鼻筋へと触れるだけの軽い口づけを繰り返してやると、それだけではもう物足りないのかするりとバトーの首に腕を回して自分から口づける。
「…随分と積極的だな」
「うるさい」
それはぎこちないキスだったけれど、トグサがどれだけ自分を欲しがってくれているかが忍ばれてバトーの頬が緩んだ。
「足りねぇだろ?」
トグサのあごを取ると、今度はバトーから口づけた。
「んっ・・」
舌先で歯の表面を撫でてやると、待ちかねていたかのように歯列が開く。すかさず舌を絡ませるとトグサの鼓動が跳ねた。トグサの心肺機能に異常がないことをチェックしながら、深く舌を絡ませる。
(すげぇ…)
トグサに繋いでいるコードから伝わってくるのは、必要なデータだけではなかった。引きずられないようにある程度は絞っているが、トグサが感じているものもバトーの電脳に届いている。
バトーの義体にはドラッグやアルコールを瞬時に分解出来るプラントが内蔵されているが、『クラッシャー』が分泌させる脳内麻薬は使用者本人の体内で精製されることもあって、その処理対象から外れている。
普通のドラッグと違って後遺症や副作用はないものの、強烈な依存性があるのはそれが原因でもあった。二つの脳内麻薬の相乗作用によって起こされる興奮状態こそこのドラッグが危険とされる原因だった。
淡い紅色に染まった全身に薄く汗を纏い、もう閉じることを忘れたらしい唇からこぼれるのは甘い吐息という状態のトグサがこの先どうなるか、不謹慎とは思ったがバトーにとっては不安かつ、非常に楽しみだった。
<Sorry,to be continued!>